xRの未来と、これからやりたいこと

(2017.12 update)

指標としてのSAO

SAOのファンです。エンジニアの間では一般教養の範囲なので特に作品の説明はしませんが、Oculusのパルマー・ラッキーもファンを公言するほど、その影響力は折り紙付き。近い将来、作中に出てくる「ナーブギア」のように五感すべてをインタラプトするほどのHMDは出てこないとしても、SAOの描く世界からバックキャストして、技術的に今何ができるかを考えるのはエンジニアとして非常に楽しいことです。

SAOのメインテーマは徐々に変化しています。ライトノベル第8巻までは「VR」、2017年公開の劇場版は「AR/MR」、そしてアリシゼーション編以降は「人工知能」。中でも「VR/AR/MR=xR」に注目してます。ざっくりxRを説明すると、現実世界の制約を取っ払って、人間を拡張し、現実と人工現実をミックスするという試みです。VR元年を過ぎて落ち目ではないかと言う識者もいますが、VRの本質は、新しい世界を創りたい、新しい世界を見たいという「人間の根源的欲求」に繋がっていることから、どんな形にせよ絶えることのない潮流として残り続けると考えています。一生エンジニアでありたいと思う私にとっては、この波には乗らざるをえないと感じています。

xRの現状と未来

xR技術は、《フェーズ1》単発のエンタメ系コンテンツ(ゲーム、実写映像など)や便利系ツール(医療、建築など)から広がり始め、《フェーズ2》ネットワークで体験を共有する小規模なコミュニティを生み出し、《フェーズ3》最終的には「もう一つの社会」を生み出すだろう、と私は考えています。

《フェーズ1》と《フェーズ2》は現在進行中です。前者は、PSVRやポケモンGOなどの大衆ゲーム、VR ZONEやUSJのXRライドなどのアーケイドゲーム、VR内見VR手術シミュレーションなどを指します。後者は、VR Chatcluster.などのイベント空間・コミュニケーション空間系のサービスを指します。《フェーズ3》はxR技術でつくりあげた世界の中でも 現実の世界と同じように生活を送る、という段階です。これは未来の話ですね。

ちょっと先の未来 | VR空間で現実を完全再現する

《フェーズ1》と《フェーズ2》を踏まえて、ちょっと先の未来(主にVR)の話をします。ここでは、未来の音楽ライブを始めとしたエンタメイベントを例に上げてみたいと思います。現実世界のあらゆるもののデータをVR空間に再構築し、現実世界に限りなく近い体験を再現したライブ会場の話です。

—未来のライブ会場。まずユーザーはSUPER SCAN STUDIOでつくった高精細なアバターでVR空間にダイブします。歩行型デバイスに乗るのである程度動き回ることもできます。HMDは無線化されて匂いを再現する機能も組み込まれています。人間と見間違うほどの受け答えをするNPCとコミュニケーションをとり、グッズは仮想通貨で購入5Gを利用してレイテンシーはほぼゼロ。触覚フィードバックの全身スーツを着用することでより没入感のある体験へ。現実世界の街並みを3Dデータ化するVarCityのようなプロジェクトが完成すれば、会場の外に出てもリアルな街並みがどこまでも続いているという状態に…

ほとんどに参考リンクが貼ってあることからもわかるように、これら既存の技術の組み合わせで、かなりの没入感が期待できるコンテンツを近い将来体験できると期待しています。

NHKスペシャル『NEXT WORLD 私たちの未来』

もっと先の未来 | ゲームの世界で暮らす

これらの技術の進化の先には《フェーズ3》の「もう一つの社会の形成」という未来が見えてきます。具体的には、長時間のダイブを前提としていて、経済活動や仕事をVR空間でこなし、VR空間上で友達や同僚、家族といった人間関係も構築されているというイメージです。上述した現実世界の完全再現にも興味はありますが、ここでは個人的に興味のあるファイナルファンタジーやドラクエなどのゲームの世界での生活を例に、理想の1日を書いてみます。

—現実世界で目を覚ます。朝の身支度を済ませたら、VR専用のスーツとHMDを着用。するとファイナルファンタジー・エオルゼアの自宅でアバターも目を覚ます。飛空挺に乗って出社したらVR空間で仕事をこなす。プレゼンもMTGもPC操作も現実世界と遜色なく行える。外回りなど社外での移動は、基本的にテレポを使用。退社時間になったらFCハウスに帰宅。そこにはエターナルバンドを交わした妻や仲間が待っている。食事と入浴とトイレだけインターバルをとって、残りはVR空間で過ごす。リアル出社は週に一回だけ…

こんな感じです。現実でやった方がいいことは現実で、VRでやった方がいいことはVRで。この使い分けを当たり前のようにできる未来が来るでしょう。VRChat社はすでにVRリモートワークを実現しているように、通勤とか会議とか、VRでやった方が効率が良いことは徐々にVRに移行していくのが必然だと思っています。なのでこんな未来は案外近いかもしません。そしてここまでいけば、xR技術は社会のインフラ・プラットフォームになったと言えるでしょう。

追記:
GOROmanさんのエントリ「2040年くらいのVRをかんがえる」が参考になります。大方同意です。

xRの行き着くところ | 人類のアイデンティティを更新する

「もう一つの社会」で生活することが当たり前になると、人は「もう一つの現実」を感じるようになるのではないでしょうか。そして人は既存の現実と、xRによって生み出された現実の、それぞれに根ざしたアイデンティティをもつようになるのではないでしょうか。「現実」と「もう一つの現実」を行ったり来たり。シームレスにつながることで、境界線が溶けていき、時に一体化する(VR空間のデータを現実世界にもってくるには、電脳コイルのようなMRデバイスや網膜に直接投射するデバイスなどを装着すれば、可能でしょう。)

中にはネガティブな人がいて、「ディック感覚が…」などと言い出すかもしれません。ですが私は「2つの現実があって、2つのアイデンティティがあっても良いよね」と言える世界になって欲しい。そしてそれが当たり前になれば、人類の生産性は劇的に向上するし、エンタメの表現領域も大幅に拡大するし、何より1回の命で複数の社会に属し、複数の人生を送ることができる。そんな未来にワクワクするのです。

長々と書いてきましたが、このようなxR技術が人類にとって当たり前に受け入れられるようになるその日まで、ゲームでもエンタメでもジャンル・技術を問わず「エンジニアとして貢献できることは全てやりたい」という所存です。

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